科研費(文科省・学振)獲得実績 - 野村 瞬
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海洋基礎構造物の施工最適化に向けた模型実験及び数値解析の高度化
研究期間: 2023年 - 2025年 代表者: 野村 瞬
国際共同研究強化(A) 研究代表者 22KK0248
海底地盤上で安全に早く構造物を打設する技術の確立に向け、海洋地盤に関して豊富な知識と経験を持つノルウェー地盤工学研究所(Norwegian Geotechnical Institute)の海洋地盤工学研究室と共同研究を行う。①透明地盤技術による構造物-地盤界面の高精度観測や②貫入試験機により最適な基礎構造物の施工法や管理手法を検討、③構造物側を適用した土-水連成有限要素解析システムによる模型実験の再現解析、④施工環境に応じた地盤の実データをもとに現場スケールでの施工シミュレーションを実施する予定である。
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透明地盤実験と数値解析で解き明かす海洋基礎杭の最適な施工法と杭構造
研究期間: 2022年04月 - 2025年03月 代表者: 野村 瞬
基盤研究(C) 研究代表者 22K04306
洋上風力発電における基礎構造物の需要拡大に伴い、水深50m以深の海底地盤上で安全に早く杭基礎を打設する技術の重要度が増してきている。海洋での打設作業は、作業性が著しく悪いので、シップタイムが制限される厳しい条件でも短時間で確実に施工を完了できる革新的な技術が必要とされている。
海洋地盤上で簡便かつ短時間で杭基礎の施工を完了するための技術確立に向け、本研究では、構造物貫入中の地盤と構造物の高精度可視化に挑戦する。また、貫入試験機を用いて最適な杭の打設工法や杭形状・構造を検討する。加えて、土-水連成有限要素解析システムに構造物側を適用することで進化を図る。 -
連続サンプリングによる柱状図の品質および地質構造と地盤性状の評価技術の向上
研究期間: 2022年04月 - 2025年03月 代表者: 谷 和夫
基盤研究(B) 研究分担者 23K22855
海底地盤の調査では,陸域で一般的な標準貫入試験や乱れの少ない試料のサンプリングは施工の制約から高コスト過ぎる。そこで,施工が早いサウンディング(例えばコーン貫入試験)に連続サンプリングを組み合わせた効率的な調査方法の確立を目指す。貫入性能と試料の採取性能が高いサンプラーの開発と,得られた連続試料の品質評価がポイントである。一般的なコーン貫入試験にそん色のない貫入性能と,地層の代表性を失わない程度にしか乱されていない試料(representative disturbed sample,ISO22475-1の品質クラス2ないし3)に相当する品質を目指す。
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高解像透明地盤実験と大規模数値シミュレーションで解き明かす地盤浸透破壊メカニズム
研究期間: 2022年04月 - 2025年03月 代表者: 西浦 泰介
基盤研究(B) 研究分担者 23K22863
本研究では高解像透明地盤試験と数値シミュレーション技術を武器として、局所的に発生した水みちが発達し堤防崩壊を誘発するプロセスを、地盤と水理のマルチフィジックス的知見に基づき科学的に解明する。
研究では、①屈折率整合法による高解像透明地盤実験技術を確立し、②浸透破壊現象の基礎実験により水みちの生成・成長過程を明かにする。
次に、③実験を再現する数値シミュレーションにより地盤内部の応力や浸透状態を把握する。以上、水みち発生・成長の基礎過程の理解をもとに、④水みち生成から崩壊に至る過程を透明地盤実験と大規模数値解析により明らかにすることで堤防域における地盤浸透破壊メカニズムの解明と定量化に挑戦する。 -
深海底開発リスクを知るための深海底地盤工学創設に向けた原位置地盤計測手法の確立
研究期間: 2021年04月 - 2025年03月 代表者: 山中 寿朗
基盤研究(B) 研究分担者 23K21026
深海底の鉱物資源開発や再生可能エネルギーを得るための施設設置に関わる利用などは、日本に残された数少ないフロンティアの一つである。しかしながら、陸上や浅海底で当然行われる、構造物設置の地盤状況の調査・把握は深海底では未だ行われておらず、構造物の設計に必要不可欠なパラメーターが欠如したままで、深海底利用のリスクそのものを評価出来ない状況にある。そこで本応募課題では、試料を採取して船上や陸上で地盤特性の評価が出来ない深海底において、原位置試験法としてコーン貫入試験の適用法を確立し、実際に得られるデータから深海底地盤が陸上と比べどのように評価されるものなのかを明らかにすることを目指すものである。
既存三成分コーン貫入試験機(以下CPT装置)のキャリブレーションおよび、試験実施海域における採泥などを通じた海底堆積物の物性試験を行った。CPT装置は、各センサ類の挙動特性について実際に深海底で潜水艇(JAMSTEC所属の「しんかい6500」)のマニピュレーターを使ったテストにより、把握することができ、キャリブレーションに必要な情報を得ることが出来た。堆積物試料も潜水艇によりプッシュコアによって採取されたものを用いて含水比及び湿潤密度、粒度組成、鉱物組成の測定を行った。これらのデータを元に、有明海軟泥が模擬海底地盤の一次候補として適性であると判断できるに至った。また、CPT装置の運用から、マニピュレーターによる貫入ではなく定速かつ直線的な貫入のための架台が不可欠である事が明らかになったため、架台の開発・作製に取り組んだ。また、海底堆積物のCPT装置(先端抵抗・間隙水圧・周面摩擦力を計測)による貫入試験だけでなくせん断抵抗(粘着力)を計測する原位置ベーンせん断試験についても海底で採取された堆積物の物性から、潜水艇で実施可能とわかったため、有明軟泥の物性値を参考に低トルク(0.6から6N・m)領域を測定可能で潜水艇のマニピュレーターでオペレーション可能なベーンせん断装置を作成した。
深海底で利用する各種原位置計測装置の開発は順調に進んで、実際の運用試験を実施できる状況にある。また、運用試験のための航海も確保できている。
模擬海底地盤として、比較的入手の簡単な有明軟泥が候補と出来たことで、複雑な物質の調整が不要となると期待され、2023年度の原位置計測データをインプットすることで、かなり具体的な模擬海底地盤物質の開発の方向性が定まるものと期待される。
2023年度は、三成分CPTを定速かつ直線的に貫入差せるために作成した架台を用いた、深海での実際の計測と、原位置ベーンせん断試験の潜水艇による運用試験を実施し、同時に堆積物を採取し、原位置計測試験のデータと、採取試料から得られる物性情報を用いて深海泥の地盤特性をより詳細に把握することを目指す。このデータを用いて、深海地盤計測のための模擬海底地盤を有明軟泥をベースに、より深海での特性に近いものの作成を目指す。
これらの成果を地盤関係学会で発表すると共に、深海底の有効利用を考える民間企業などのニーズを探るため、2024年度に予定している深海底有効利用のための基礎技術開発をテーマとしたシンポジウムに先立って、興味を持ちそうないくつかの企業を招いたワークショップの開催を2023年度内にも企画する。 -
計算科学と観測技術の融合が解き明かす乱泥流の長距離輸送機構に関する統合的理解
研究期間: 2019年10月 - 2023年03月 代表者: 西浦 泰介
国際共同研究強化(B) 研究分担者 19KK0110
本研究では,乱泥流の運動メカニズムを包括的に理解することを目的として,最新の計測技術とシミュレーション技術を総動員し,乱泥流の速度,濃度,粒子径分布等の内部構造や土砂の運搬・堆積作用の詳細を明らかにする.
実験・解析事実を蓄積する中で,相互に連携・高度化を図り,最終年度に長期運動性と堆積プロセスの説明付けを行う.
海底で大規模に進行する土砂流れ(乱泥流)の被害予測・リスク管理に向け,スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の水工学研究室と共同研究を進めている.地震や季節的な水位変動に起因する「海底斜面の不安定化」により頻発する乱泥流は,海底構造物を破壊しながら数千km以上流動する.しかしながら,その発生場所や規模の予測は困難であり,海洋における大規模なインフラ整備や海底資源開発の妨げとなっており,被害の定量化や適切な対策の立案を行うことが重要となっている.
本研究では,共同研究の相手方であるEPFL研究室が有する高精度超音波計測技術と初期・境界条件が管理可能な水槽実験設備を利用し,①粒子懸濁液の速度場,濃度場,粒度分布を計測する手法を確立を目指し,②乱泥流の詳細な運動メカニズムを明らかにする.実験結果をもとに,研究代表者らが有する③粒子-流体相互作用を考慮したシミュレーション技術の高度化を図り,④乱泥流の長距離土砂輸送メカニズムについて論理性・普遍性・客観性を有する包括的な説明手法を提案することを目的としている.
本年度は,乱泥流を模擬した粒子懸濁液の連続注入による水槽実験の結果整理を進め,乱泥流が流動中の懸濁粒子の堆積過程を整理し,物理法則に従って粒子が運搬され堆積するメカニズムを買いらかにした.この事実は,乱泥流が長距離土砂移動におけるメカニズムに深く関係すると考えられるため,今後,実験や解析を通して分析を進める予定になっている.また,乱泥流の流動中の可視化を目指した手法の開発に取り組んだ.適切な粒子,流体を選定することにより,高精度で流体の内部可視化ができることが確認され,次年度以降に実施する,粒子-流体の相互作用整理のための水槽実験の足掛かりとすることができた.
長さ6.0m,高さ1.0m,幅0.3mの実験水槽で生成された粒子懸濁液による模擬乱泥流の速度構造が整理できた.実験結果は乱泥流が斜面方向に力のつり合いを保ち,同質の形状で領域底面に沿って流動することを明らかにした.当該実験事実の更なる理解により,乱泥流の長期運動メカニズムの要因を整理できる可能性が示唆されることとなった.
また,長さ4.6m,高さ0.2m,幅0.14mの水槽で行った小規模実験についても結果の考察を行い,乱泥流の運動メカニズムの整理を行った.
懸濁液の①初期比重,②流入量,③粒子物性(粒度/吸着性)等によって変化する乱泥流の流況を,流れ方向に設置する計測装置によって観測する手法を開発する.流れを観察するための実験設備を試作するとともに計測環境を整備し,粒子と流体によって引き起こされる諸現象を整理し,底面や流れの上層部における流速・濃度分布や粒子-流体相互作用を明らかにする.
あわせて超音波エコーや側面画像等の情報から領域の濃度分布の定性的な評価が可能か検討を進め,速度・濃度・粒子径のプロファイリング技術を確立する.計測結果をもとに粒子-流体連成解析コードの整備を進め,混相流中で生じる要素レベルの現象を明らかにする方法を模索する. -
海底表層地盤開発に向けた地盤骨格変形-流体浸透-熱輸送体系の統合
研究期間: 2019年04月 - 2022年03月 代表者: 野村 瞬
若手研究 研究代表者 19K15094
①地盤骨格の変形安定,②流体浸透-物質輸送,③熱輸送-化学状態変化等の理論統合に向け,実験・解析事実を蓄積し,海底資源開発やインフラ整備へと技術を援用するための基礎理論の構築を行う.地盤内に種々の要因が計測可能な計測機器を埋め込んだシステムを構築し,地盤骨格,間隙流体の時空間変化を計測する.得られた実験結果をもとに既存の地盤変形解析コードを高度化し,深海底地盤で生じる物理現象の表現性能の評価を行う.
海底表層地盤の力学メカニズム解明に向け,特殊な環境変化を伴う地盤状態を評価できる多相連成手法の総合化を研究テーマとしている.海底面と地殻に挟まれた境界部には必ず海底地盤が存在し,その領域は地球規模でみると狭く,占有率は大きくない.しかしながら,自然界でみられる多くの境界部同様,多様な物理化学現象が観察される領域であり,地球ダイナミクスの解明とその産業利用に,大きな期待が寄せられている.
研究過程では,これまで独立に捉えられてきた,①地盤骨格の変形安定問題,②流体浸透-物質輸送問題,③熱輸送-状態変化関係の理論統合に向け,実験・解析事実を蓄積し,海底資源開発やインフラ整備へと技術を援用するための基礎理論の構築を進めている.
現在,数理理論の構築を中心に研究を進めており,既存の地盤工学の力学体系に熱や化学作用を取り入れることで当該効果がどのように影響を与えるか理論の整理を進めている.また,地盤中の熱や溶解物質が地盤内を運動する際,温度,圧力,濃度といった逐次変化する環境因子の中でそれらがどのように領域に伝播していくか,質量保存則,混合体理論をもとに明らかにする手法を検討している.加えて,連続体理論をもとに,海洋構造物と地盤材料の境界で生じる両者の相互作用を適切に考慮するための地盤材料-構造物接触問題について地盤の力学現象を拡張し,再整理する方法について検討を進めている.
物質移動作用を中心とした理論構築に向けて,地盤中の移流分散モデルを整理できた.また,既存の実験データを見直す中で,地盤力学の力学体系に援用する手法を模索中である.加えて,海底表層軟弱地盤の力学体系や海底構造物と地盤の相互作用の定量化のための理論を構築中であり,力学体系が完成次第,既存の実験結果や現場試験との整合を確認する.
本年度までに得た知見をさらに発展させ,海底地盤で生じている力学現象について定性的な現象を理解するための解析ツールを整備する.その上で海底地盤における調査技術開発に向けた実験設備を整える. -
深海底地盤力学の構築に向けた間隙流体-土骨格-熱力学連成モデルの確立
研究期間: 2015年04月 - 2019年03月 代表者: 野村 瞬
若手研究(B) 研究代表者 15K18115
深海底地盤の力学メカニズム解明に向け,特殊な環境変化を伴う地盤状態を評価できる理論の構築と検証のためのモデル実験,数値解析を行った.変形―流体浸透―物質輸送問題の連成手法を開発し,複合的な要因により変化する地盤環境の整理手法が提示された.本成果により,これまで切り離して整理されることの多かった地盤骨格における変形-安定問題,浸透問題,物質移動現象等を同時に扱うことが可能であることが示された.
海底資源の産業利用を契機として,海底地盤の力学メカニズム解明に向けた関心が高まっている.様々な技術が結集された結果,地盤サンプルが高精度で採取できるようになり,原位置での応力測定も実施可能なレベルに迫っているといわれている.他方,特殊な環境に晒される地盤の性状を精確に把握できるモデルは未発達であり,観測事実を適切に説明し,長期管理手法に繋がるための理論の整理が必要とされていた.研究過程では,実験事実や解析結果を積み上げる中で複合的に生じる現象を総合的に理解する手法を模索した.