科研費(文科省・学振)獲得実績 - 溝端 浩平
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次世代南大洋海洋観測に対するパラメタリゼーション技術の開発と展開
研究期間: 2022年04月 - 2027年03月 代表者: 渡辺豊
基盤研究(S) 研究分担者 22H05003
現在、「南極氷床融解」の理解の遅れは気候変動予測のボトルネックとなっている。 このため、以下の項目を実施し、次世代の南大洋海洋観測に対するパラメタリゼーション(経験的関数化)技術の開発と展開を行うことで、南大洋における氷床融解の理解を深め、氷床融解と海洋生態系物質循環の相互作用の包括的な実態解明を目指す。
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研究期間: 2021年04月 - 2025年03月 代表者: 田村 岳史
基盤研究(A) 研究分担者 21H04931
海による南極氷床の底面融解過程は、海水準将来予測の中で早急に解明すべき大きな不確定要素と位置づけられている。この底面融解過程は、主に外洋からの暖水流入と沿岸での海氷生産に伴う低温の高密度水の挙動によって制御されているが、卓越する素過程には地域特性が存在する事が明らかになりつつあり、氷床-海氷-海洋システムにおける地域特性の解明が課題となる。本課題では、南極氷床総量の約9割が存在する東南極に着目し、東南極沿岸を特徴付ける4海域に着目した観測・数値モデル比較・統合研究を行う事により、地形的な条件や大気・海洋の気候的条件等の地域特性と氷床底面融解・海氷生産との関連性を明らかにする。
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東南極トッテン棚氷へ暖水を運ぶ巨大な定在海洋渦の成因と循環流量の変動要因の解明
研究期間: 2021年04月 - 2025年03月 代表者: 溝端浩平
基盤研究(B) 研究代表者 23K21745
全球の海水準上昇の将来予測において、最優先課題の一つは「南極氷床変動の実態把握」である。近年この氷床変動メカニズムとして、「沖合から輸送された暖水による氷床末端部(棚氷)の底面融解」が挙げられている(図1)。申請者らは独自の衛星データと現場観測から、莫大な氷床を有する東南極(東経領域)の陸棚斜面沖で「定在する巨大海洋渦(定在渦)」が、沖合の暖水を恒常的に大陸棚へ輸送することを明らかにした。一方、大陸棚への熱輸送量を左右する定在渦の成因や循環流量の変動要因は明らかになっていない。本研究では、東南極で顕著な氷床質量損失が指摘されはじめたトッテン棚氷の沖合において、「定在渦による熱輸送量」「定在渦の成因・循環流量の変動要因」を現場観測・衛星観
測・数値実験の融合研究により定量的に明らかにする。 -
研究期間: 2020年07月 - 2024年03月 代表者: 北出 裕二郎
挑戦的研究(開拓) 研究分担者 20K20634
本研究は、海洋ビッグデータを活用し、流れで受動的に移動する昇降式フロートによる観測を、計画的に流れに乗せて移動させ、能動的に観測するためのアルゴリズムの開発を行う基礎研究である。予定通りにフロートを移動させるには、高分解能・高精度の3次元流速情報が必要である。そこでまず、海面漂流ブイの追跡実験から衛星海面高度生データの最適補完法を開発し、その高分解能海面高度データと海洋観測ビッグデータを組込んだ数値モデルにより3次元流速場を推定する。次に、昇降式フロートを用いた3次元漂流実験を行い、流れ場の検証と移動予測を行う。さらに、適切な深度にフロートを待機させて目的地に導くためのアルゴリズムを開発する。
本研究は、海洋ビッグデータを活用し、水平的に移動する機能を持たず流れで受動的に移動する昇降式フロートによる観測を、計画的に流れに乗せて移動させ、能動的に観測するためのアルゴリズムの開発を行う基礎研究である。フロートを計画通りに移動させるには、高分解能・高精度で3次元流速を推定する必要がある。本研究は、衛星海面高度の高分解能補間アルゴリズム開発、高分解能モデル開発と高精度化、フロートの現場実験による検証に分かれており、最終的に組み合わせてフロートの最適な昇降制御アルゴリズムの開発を行う。
2021年度は実験用昇降式フロートの製造が遅れていたことから、当該経費とは別経費の所属機関経費で購入した自動昇降式フロート2基を用いた実験を先行的に実施した。2021年10月上旬に海鷹丸によりフロート2台を黒潮流域に投入し、待機深度調整による実験を実施した。この実験は当該課題の最終年度まで続ける予定である。実験の結果、同地点に投入した2つのフロートは100㎞以上離れるという全く異なる経路を漂流し、その後互いに近づくという挙動を示した。週に1回程度の計測とデータしか得られていないため、今後も継続した実験とデータの蓄積が必要である。
再現モデルの開発においては、この異なる経路を再現するようにHYCOMのデータを境界条件とする数値モデルのチューニングの実施を始めた(継続中)。
一方、船舶による現場実験の実施が困難な状況が想定されたため、これまで当該研究室において多くのデータが蓄積されている南大洋で得られたデータの解析から、自動昇降式フロートの漂流の評価と海洋物理現象との整合性の研究や物理現象と係留データとの整合性の研究を実施した。また、フロートの動きが海洋中規模渦の構造に大きく作用されることから、南大洋の渦運動の特徴をEKEの変動形態により評価した。これらの成果は投稿論文あるいは修士学位論文としてまとめられた。
コロナ禍における諸々の事項と関連して、現場実験の中止や遅れがあり、特に以下のような遅れが生じている。
(1)実験用の昇降式フロートを発注したが、機器製造会社で部品を調達できず機器の製造が8カ月程度遅れている。当該物品は2022年6月上旬納品予定となっている。(2)海面漂流ブイの現場実験の実施に当たり海鷹丸に乗船したが、入港等に関連した規制により対象海域まで行くことができず現場実験を断念した。
現場実験に関して、これまで同一の海域で同時に実施することを想定して計画を進めていたが、成果として得られるアルゴリズムは汎用性があると考えられるため、現場実験はそれぞれ実施できる海域で適宜実験を行い、アルゴリズムの集約により海洋モデル、漂流モデルを改善していくこととする。これにより遅れている現場実験を同年度に並行して実施可能であると期待できる。
海面漂流ブイの実験はこれまで蓄積されたデータが多くある南大洋にて実施し、衛星海面高度から地衡流として推定される流れとの比較を行う。高解像度で海面高度を評価するためのアルゴリズムの開発を行う。このアルゴリズムは、漂流再現モデルのもとになる海洋モデルの境界条件をして適用する。
2022年度6月に納品が予定されている昇降式フロートを用いた現場実験を実施する。実施海域は黒潮流域で、東京海洋大学の神鷹丸により7月から8月に実施することを想定している。
2021年度から継続して漂流再現モデルのチューニングを行い、再現精度が改善され次第、そのモデルをもとにしたフロート昇降制御の最適化アルゴリズム開発に移行する。 -
トッテン棚氷融解の引き金:海洋渦が介在する沖合から棚氷への熱輸送過程の解明
研究期間: 2020年04月 - 2022年03月 代表者: 溝端浩平
新学術領域研究(公募研究) 研究代表者 20H04970
南極大陸の東経領域(東南極)の莫大な氷床は、融解すれば海面水位を50m上昇させる。氷床・棚氷の底面融解を促進させる要因は海洋からの暖水波及である。特に、東南極に位置するトッテン棚氷では著しい底面融解が報告されている。しかし、その一方で海洋の暖水が外洋から陸棚や棚氷にまで供給される過程については不明である。申請者の研究結果からトッテン棚氷の西側領域において、外洋から陸棚斜面への暖水波及に海洋渦が介在していることが示唆された。本研究では東南極の棚氷融解の爆心地「トッテン棚氷」の沖合から陸棚域において、渦の構造とその時空間変動要因、渦が介在する熱輸送過程について衛星観測と現場観測から明らかにする。
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衛星高度計による南極海海氷域の海洋循環の解明と周極深層水の輸送経路の推定
研究期間: 2018年04月 - 2020年03月 代表者: 溝端浩平
新学術領域研究(公募研究) 研究代表者 18H05051
CryoSat-2レーダー高度計観測値から、南極海の海面力学高度(ADT)データセットを作成した。水平解像度はEASE2グリッド(50km解像度)および0.2度グリッドの2種を採用した。ウェッデル循環・ロス循環の強度と風の回転成分を比較したところ、それぞれ相関係数0.60, 0.64となり、大気循環場で説明できることが示された。当該研究が対象とする東南極では、現場観測で示されてきた時計回り渦(200kmスケール)はEASE2グリッドでは確認できないが、0.2度グリッドデータで捉えることが可能となった。ただし、0.2度グリッド解像度にしたため、各グリッドでのサンプル数が減少し、品質フラグでスクリーニングしても取り除ききれない異常値(氷縁域や高度計の観測モード変更領域に見られる)によるバイアスの寄与が、EASE2グリッドデータよりも大きくなった。そこで、0.2度グリッドデータを主成分分析で分解し、平均場とEOF第1から第10モードで再構築した。その結果、東南極では暖かい周極深層水を極向きに輸送する時計回り渦が点在していることが明らかになった。またビンセネス湾沖およびトッテン氷河沖の渦は時系列解析から、恒常的に存在することがわかった。ADTの第1モードの空間分布は、ビンセネス湾から流出する高密度陸棚水が変質した南極底層水の経路に対応する分布を示唆しており、ビンセネス湾沖の渦分布の説明変数として風応力だけではなく、南極底層水がもう一つの候補として挙げられた。
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南大洋センティネル計画-日豪共同によるインド洋区生態系のベンチマーク2020-
研究期間: 2017年04月 - 2022年03月 代表者: 小達 恒夫
基盤研究(A) 研究分担者 17H01618
食物連鎖を推定するためのゲノム解析試料を行うため、平成29年5月には、ビーズ式破砕装置を購入し、ゲノム解析試料を調整するための予備実験を行い、今後得られるゲノム解析試料の調整が短時間で可能であることが分かった。
平成29年度の南大洋における現場観測は、平成29年度東京海洋大学「海鷹丸」南極航海(平成29年12月31日~平成30年1月22日)において実施した。動・植物プランクトン、魚類稚仔を採集するとともに、ゲノム解析用試料を持ち帰った。当初計画では、表層ブイシステムを作製し、中規模渦発生海域に投入する予定であったが、観測時間を十分に確保することが出来ないことが判明したため、平成29年度の投入は断念した。
日豪の研究協力強化に関しては、平成29年8月12~16日に、SOOS RWG - Southern Ocean Indian Sector Working Group 2017 Meetingを神奈川県葉山町で開催した。この会議は、南極研究科学委員会(the Scientific Committee on Antarctic Research (SCAR))、及び海洋研究科学委員会(the Scientific Committee on Oceanic Research (SCOR))が主導する、Southern Ocean Observing System(SOOS)における海区毎のワーキンググループ(Regional Working Group (RWG))の一つである。日本とオーストラリアの主要研究海域である南大洋インド洋区では、Southern Ocean Indian Sector Working Groupを組織している。日豪の研究者が中心となり、南大洋インド洋区で研究を行っているフランス・中国・インドの研究者が参加した。また、「海鷹丸」が南極航海を終え、オーストラリア・ホバートへ寄港した際には、タスマニア大学のInstitute for Marine and Antarctic Studies (IMAS)においてUmitaka Maru Seminarを開催し、今後とも海洋研究分野における日豪の協力を進めることを確認した。
平成29年度の「海鷹丸」南極航海において、生物種の分布特性を調べるための動・植物プランクトン、魚類稚仔の試料を採集することが出来た。また、動物プランクトン・魚類稚仔では、消化管を摘出した試料、糞粒試料を用いて、食物連鎖を推定するためのゲノム解析用の試料を得ることが出来た。ゲノム解析試料調整の予備実験から、現場で得られた試料を迅速に解析用試料に調整できる。
本課題と深く関わる「南極海洋生態系センティネル研究-事前観測-」(科学研究費補助金 基盤研究(A)(海外学術調査)(平成24~28年度)(研究代表者:小達恒夫))等で得られた成果を取りまとめ、学術雑誌Polar Scienceの特集号として公表している(平成29年7月)。また、この特集号に間に合わなかった成果については、関連学会等で発表している。本課題で得られた成果についても、迅速に公表して行く研究組織であるといえる。
日豪の研究協力強化に関しては、SOOS RWG - Southern Ocean Indian Sector Working Group 2017 Meetingを両国が中心となって開催し、南大洋インド洋区の海洋研究におけるリーダーシップを発揮することが出来た。また、Umitaka Maru Seminarにおいても、海洋研究分野における日豪の協力を進めることを確認することが出来た。
以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
平成30年度においては、平成29年度までに行われた「海鷹丸」南極航海において得られた動・植物プランクトン、魚類稚仔試料、およびゲノム解析用試料の解析を実施する。特に、動物プランクトン・魚類稚仔では、消化管を摘出した試料を用いて、食物連鎖を推定するためのゲノム解析試料を行う。これらの解析から不足していると考えられる試料については、平成30年度に実施される「海鷹丸」南極航海において採集する。
また、これまでに得られた試料の解析の研究成果を、平成30年4月にホバート市で開催される2018 Marine Ecosystem Assessment of the Southern Ocean Conference(MEASO2018)において発表する。MEASO2018期間中には、今後の南大洋センティネル計画(Southern Ocean Sentinel)における日豪協力体制について議論することにしている。MEASO2018における各国の動き、および日豪の議論を受けて、平成30年7月に東京で開催される第4回南極科学に関する日豪ワークショップにおいて、海洋生態系分野における日豪協力の進展および今後の方向性について報告する。 -
研究期間: 2015年04月 - 2019年03月 代表者: 小野寺 丈尚太郎
基盤研究(A) 研究分担者 15H01736
海洋研究開発機構海洋地球研究船「みらい」による2017年9月の海洋観測航海(MR17-05C航海)に乗船し、前年9月に北極海太平洋側2か所(米国アラスカ州バロー北方沖およびチュクチ海ハンナ海底谷北部)に投入した海底固定型時系列セジメントトラップ係留系の回収と設置を行った。前年に投入した係留系が無事回収されたことで、本課題で得られた水温・塩分データや沈降粒子試料の蓄積が2015年9月から約2年分に増え、海洋表層~亜表層の物理環境と、低次生物活動の動態やセジメントトラップで捕集される粒子量変動との関係が少しずつ分かってきた。バロー北方沖においてセジメントトラップで捕集された陸棚海底由来の再懸濁物を主体とする粒子量の時系列変動は、2015年は10月に、2016年は12月に極大を示した。捕集粒子量が極大となった月の違いは、チュクチ海の陸棚下層をカナダ海盆に向かって流れ出たベーリング陸棚起源水が係留系地点深度100m前後の亜表層に検出された時期の違いとほぼ対応していた。生物活動が活発になる6月から8月の期間を見ると、2016年は海氷が陸棚縁辺に沿ってバンド上に残り続けた。結氷水温に近い冷水塊が亜表層に分布し、亜表層のクロロフィル濃度も低かった。2017年の夏は、海氷は前年のようなバンドを形成せずに海盆側へ後退し、ベーリング海起源水やアラスカ沿岸水が係留系地点で確認された。植物プランクトン色素濃度も前年より高めとなった。
バロー沖で形成される海洋渦によるカナダ海盆西方に向けた粒子輸送の寄与について、数値モデル実験を開始した。またチュクチ海北部陸棚縁辺からチュクチ深海平原にかけての北太平洋起源水の輸送について、数値モデルによる実験結果を中心に考察した論文を国際誌Deep-Sea Research Iから出版した(Watanabe et al. 2017)。
計画していた係留系2系の回収と再設置は計画通り実施され、また本研究に必要なデータおよび沈降粒子試料を、一部センサーを除き2016年9月中旬から2017年7月まで連続して得ることができた。数値モデル実験に関する進捗も大きな問題は発生していない。
2018年度は本課題最終年のため、現場観測は2017年度に北極海に設置した係留系の回収を行い、本課題による係留系の再設置は実施しない。これまでに得られた係留センサーデータから得られる海洋物理の実測値および沈降粒子試料の分析結果と数値モデル実験の結果から、海洋表層循環場が陸棚から海盆への物質輸送に及ぼす影響について、特に以前示唆された海洋渦による物質輸送の寄与についても考察し、本課題の実施を通して得られた知見をまとめる。 -
南極底層水の昇温・低塩化に伴う深層大循環の変貌予測に関する基礎研究
研究期間: 2015年04月 - 2019年03月 代表者: 北出 裕二郎
基盤研究(A) 研究分担者 15H01726
本研究課題は、南極底層水の流量の把握と昇温低塩化の機構を調べ、進行しつつある水塊変質が今後深層大循環へどのような影響を及ぼすかを探る基礎研究である。南極海において、観測点の全深度帯をカバーする計測装置を開発すると共に、継続して長期係留による観測を実施している。
南極海観測航海:①東京海洋大学海鷹丸による南極海での観測航海は、2017年12月31日~1月22日に実施された。これまで海氷に阻まれ観測が困難であったビンセネス湾陸棚上において、船舶からのCTD観測に初めて成功し、南極底層水の起源と成り得る高密度陸棚水が、ビンセネス湾沖陸棚上に広く分布している記録が得られた。②南大洋の鉛直子午面循環を捉えることも本課題の一つであり、本年度は南極発散帯周辺海域でCTDによる海底直上までの観測を実施した。③また、前年度に南緯61度東経110度水深約4200mに設置した巨大係留系、およびビンセネス湾沖南緯63.5度水深約3000mの地点に設置した巨大CTD&Tチェーンを回収した。係留観測記録から観測深度帯にわたるほぼ完全なデータが得られており、現在解析中である。
観測試験および今年度の観測記録の解析結果、並びに南極底層水の形成機構における二重拡散対流の効果に関する実験結果の一部について、2017年度5月のJpGU、10月の日本海洋学会秋季大会(仙台)、11月のCoast Bordeaux 2017(ボルドー,フランス)にて発表した。
前年度南極海に設置した巨大係留系および巨大CTD&Tチェーンを無事回収できたこと、回収したほぼ全ての機器からデータを抽出してきたことから、計画していた観測が実施できている。また、南極海の海況・海氷状態やシップタイムの関係上、計画していた地点でのCTD観測を実施できなかった点はマイナスであるが、これまで、海氷に阻まれて観測できなかったビンセネス湾ポリニヤ域で観測を実施でき、高密度陸棚水の特性とその分布を捉えることができた点は想定以上の成果が得られたと言える。
一方、自律式乱流計のバッテリー駆動による試験運用については、バッテリーケースの納品の若干の遅れを保ちつつ進行しているが、2018年度の現場運用試験は想定通り実施できることから、ほぼ計画の範囲内であると言える。
以上、本課題で最も重要な南極海における2系の巨大係留系を回収できたこと、ポリニヤ域での高密度陸棚水の特性を把握できたことでデータをもとに研究発表および論文作成が進められていることからおおむね順調に進んでいると判断した。
本研究は、長期的なモニタリングを兼ねた研究課題であるため、今年度も引き続き南大洋で観測を実施する。当該科研費は今年度までであるが、日本南極地域観測隊一般研究課題と合わせて係留系の設置を実施するため、引き続き南大洋へ長期係留系の設置を予定している。今年度の南大洋における観測航海は、2019年1月2日から2019年1月26日を予定しており、1系の巨大CTD&Tチェーンを設置する。
最終年度であるため、取得データの取りまとめ、衛星データの解析と係留データの比較等についてさらに解析を進め、国内外の学会等で発表する。また、南極海での観測までの期間は、観測機器の運用試験と調整のため、相模湾等において当該研究所属機関の青鷹丸で観測を実施する。 -
研究期間: 2014年04月 - 2017年03月 代表者: 溝端 浩平
若手研究(B) 研究代表者 26870203
衛星レーダー高度計CryoSat-2/SIRALの観測データからこれまで不明であった冬季北極海の月平均海面力学高度・地衡流場を導出した。海上風・海氷運動との比較から、冬季においても海面応力の変動に応答して、北極海のボーフォート循環は順圧応答により時空間変動を示すことがわかった。また、ボーフォート循環は海面応力の強化に伴い、西方に分布を拡大させることがあることもわかった。冬季海氷下でのボーフォート循環の変動は、海氷減少をもたらす夏季太平洋水の行方を決める重要な要因であり、本研究の成果は北極海の海氷変動予測に資するものである。
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南極海表層水の低塩分化が深層大循環に及ぼす影響評価に関する基礎研究
研究期間: 2011年04月 - 2015年03月 代表者: 北出 裕二郎
基盤研究(B) 研究代表者 23310003
南極海表層水の低塩化に伴う南極底層水の変質と深層循環に及ぼす影響を評価するため、東京海洋大学研究練習海鷹丸により2012年から2015年の毎年1月に南極海110°E及び140°E周辺海域で、水温・塩分場の観測、長期係留観測、乱流観測等を実施した。本観測では、中規模ポリニヤを起源とした南極底層水の生成を世界で初めて明らかにし、オーストラリア南極海盆の底層水上部へと沈み込んでいることを示した。底層水の顕著な低塩化は、140°Eだけでなく110°Eでも認められ、特に、昇温も認められた2014年には海盆底層水の密度が相対的に軽くなり、ビンセネス湾起源底層水が海盆底層水下部まで達していることが分かった。
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研究期間: 2010年 - 2011年 代表者: 溝端 浩平
研究活動スタート支援 研究代表者 22810010
西部北極海における海氷減少は、太平洋水流入による海洋温暖化によるものである。継続的な現場観測が困難な北極海では、海洋温暖化を監視する代替手法の開発が喫緊の課題である。本研究では、バロー峡谷の上流域であるPt. Hope~Pt. Layにおける海上風および海面水温を用いた回帰式から北向き順圧流量・流速傾圧第一モードの構造・水温鉛直プロファイルを得ることで、バロー峡谷を介した北極海への現実的な海洋熱フラックスが推定できることを明らかにした。