科研費(文科省・学振)獲得実績 - 岡井 公彦
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研究期間: 2022年04月 - 2025年03月 代表者: 荒川 久幸
基盤研究(B) 研究分担者 23K24973
海洋におけるマイクロプラスチック(以下MPs)の分布の状況は理解されてきた。しかしながら、MPsの形成から分布に至るまでの時空間的な動態は理解されていない。本研究は、MPsの劣化を調べることにより、MPsの経歴を解明するものである。日本沿岸(海域、海底、海岸)におけるMPsの劣化指標(CI)の空間分布および劣化への生物作用の影響を調査・実験し、明らかにする。この結果をもとに、海洋の粒子拡散モデルからMPsの浮遊時間および経路を推定し、東アジア海域および北西太平洋海域でのMPsの流出起源を解明する。
本研究は、海洋のマイクロプラスチック(以下MPs)の劣化度(カルボニルインデックス(以下CI)および粒径等)を調べ、浮遊の時間および海域における履歴を明らかにすることも目的としている。研究内容は、第一に日本沿岸(海域、海底、海岸)におけるMPsの劣化指標(CI)の空間分布をMPsの種類別、サイズ別に明らかにする。第二に生態系に取り込まれたMPsがどのように劣化するのか解明する。第三にMPsの劣化指標を基にして海洋の粒子拡散モデルからMPsの浮遊時間および経路を推定し、東アジア海域および北西太平洋海域でのMPsの流出起源を解明する。
第一の内容として、まず、赤外分光分析(以下FTIR)によるCIの測定は様々な手法が提案されている。それらの手法を試した結果、MPsのCIを求めるためにはSAUB法(Almond et al., 2020)が適していることを見出した。2022年度では、SAUB法を用いて、従来からサンプリングしている日本近海における海表面のMPs(約3000個)について、polyethylene (PE) およびpolypropylene (PP) のMPsのCIを測定した。MPsの性質(色および形状)とCIとの関係、粒子サイズとCIとの関係を検討した。これらの結果、測点ごとのCIと粒子サイズに負の関係があることを見出した。すなわち、大きなサイズのMPsの海域のCIは小さく、小さなサイズのMPsの海域のCIは大きかった。さらに微細なMPs (50-350 um; 以下SMPs)のCIを調べたところ、非常に高いCIを示した。このことより、海洋のMPsの劣化度はCIで評価できることが確認された。
第二の内容として、鶴見川河口で様々な生物相からMPsを採取しその取り込み状況の把握を行ったところ、甲殻類で比較的多かった。これは餌料(藻類)からの摂取と考えられた。
第一の内容として、2022年度の研究では、日本沿岸の海面、海水、海底のMPsを採取し、MPsの性質とCIをFTIRによって調べた。性質の計測項目はポリマータイプ、サイズ、形状および色とした。海面のMPsでは従来から採りためたものを再計測し、CIと各種性質との関係を解析した。これらの結果は論文として印刷公表した。また7月に日本海において航走し、表層・亜表層(水深4m)の微細なMPs(50-350 um)を含むMPsを採取、抽出した。これらのサンプルのMPs濃度、ポリマータイプ、サイズを分析中である。また気仙沼の底泥のMPsの採取を行い、そのSMPs濃度の分析を進めている。一方、大阪湾のコアサンプルからSMPsを取り出し、その分析及びCI計測の準備を行っている。同時に、Pb-210, Cs-137を測定することによりMPsの鉛直的(経時的)な濃度変化を把握するための試料の調整を行っている。さらに海岸でのMPsのサンプリング手法を決定するために、定量手法を検討している。
第二の内容として、鶴見川河口で様々な生物相(甲殻類、魚類、貝類、多毛類、藻類計 10 種)からMPsを採取しその取り込み状況の把握を行った。藻類への付着が非常に多いこと、藻類食性甲殻類で比較的取り込みが多いことが分かった。このことから、甲殻類への取り込みは餌料(藻類)からの摂取と考えられた。この内容は結果を取りまとめ、口頭発表(日本水産学会2023春季大会)を行った。またプラスチック汚染沿岸域の泥とPVCフィルムを混合して2および4カ月で振盪した結果、真菌用培地を用いて2カ月振盪した条件でフィルムの3%重量減少が確認された。重量減少した培地から27株のコロニーを単離していた。
第一の内容として、2023年度には、従来採りためたサンプルの内、微細な粒子に的を絞り顕微FTIRで赤外吸光を測定し、SAUB法でSMPsのCIを明らかにする。日本沿岸(東京湾、東海沖、日本海および三陸沖)の表層、亜表層のMPsを採取し、CI計測と性質に関するデータの整理を行う。海底のサンプル採取はすでに三陸および大阪湾で行われた。これらのサンプルのMPs濃度、CIを測定する。同時に大阪湾のコアサンプルではPb-210, Cs-137の計測から堆積年代を推定し、それらのMPsのCIと対応させて、底泥中でのMPsの劣化を解明する。日本各地の水産高校生の協力を得て、日本沿岸(沖縄、長崎、山口、高知、新潟、北海道など)の海岸のサンプル採取を行い、MPs濃度とCI計測を実施する。
第二の内容として、沿岸干潟域における各種生物相が取り込んだMPsが得られたことから、それらのMPsのCIの分析を行う。生物成育環境(底泥、海水)のMPsのCIとの比較から生物による劣化度の変化について検討する。またプラスチック汚染沿岸域からPE、PP、PSの分解菌を探索する。海中浸漬したPE、PP、PS、PVCフィルムから分解菌を探索するとともにプラスチック表面の劣化を評価する。
第三の内容として、海面、海水、海底、海岸のMPsの劣化指標(CI)を基にして海洋における劣化の経時的な変化を把握する。この結果と、MPsの海洋の粒子拡散モデルからMPsの浮遊時間および経路の推定を考え合わせることにより、東アジア海域および北西太平洋海域でのMPsの流出起源および海洋での挙動を解明する。
これらの成果は論文印刷、学会発表、および公開シンポジウムで広く社会へ公表する。 -
研究期間: 2021年04月 - 2024年03月 代表者: 岡井公彦
基盤研究(C) 研究代表者 21K05768
サンゴを含む無脊椎動物には病原細菌から身を守るための自然免疫機構が備えられており、病原細菌を認識後、シグナル伝達を介して抗菌ペプチド(Antimicrobial peptide; AMP)を生産することが知られているものの、サンゴにおいてはAMPの存在や種類が特定されておらず、免疫機構は不明なままである。本研究ではこれらのAMPの立体構造解析と膜作用機序解析を行い、免疫機構の分子メカニズムを明らかにする。
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フグ毒結合タンパク質の構造と機能に関する研究-フグ毒に対する生体防御機構ー
研究期間: 2019年04月 - 2022年03月 代表者: 長島 裕二
基盤研究(C) 研究分担者 19K06241
本研究では、フグとカニがもつフグ毒結合タンパク質の構造と機能を解明して、生体防御物質としての役割を明らかにすることを目的とする。すなわち、フグ血漿のpufferfish saxitoxin and tetrodotoxin binding protein (PSTBP)と卵巣のビテロゲニン断片タンパク質ならびにイソガニ体液のフグ毒結合タンパク質を対象として、それらの組換えタンパク質を合成し、タンパク質立体構造を解析して、フグ毒テトロドトキシン(TTX)との結合サイトと結合様式を予測し、フグ毒結合タンパク質のTTX毒性軽減の効果を明らかにする。
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アルカリ化酵母とその酵素系による強酸性水圏中和の分子機構の解明
研究期間: 2016年04月 - 2019年03月 代表者: 浦野 直人
基盤研究(C) 研究分担者 16K07868
アルカリ化酵母による強酸性水中和機構の解明の1つとして、当該酵母が強酸性水圏のみに偏在しているのか、他の中性やアルカリ水圏にも生息しているのかを調査した。特に大都市(横浜)近郊の中性淡水圏14ヶ所から、アルカリ化酵母の単離を試みた。単離した耐酸性酵母360株のうち、34株がアルカリ化能を保持していた。34株のアルカリ化酵母に関して、菌種同定を行ったところ、13属21種に分類された。また、ko-w20は酸性水圏である田沢湖由来のCryptococcus sp. T1と、sm-w39は強酸性水圏の吾妻川由来のPseudozyma tsukubaenzis CBS:6389と塩基配列が一致した。これらの結果から、アルカリ化酵母は広く中性淡水圏にも生息していること、種多様性を持っていることがわかった。更に、中性水圏由来のアルカリ化酵母の中和活性は、強酸性水圏由来のそれと同等の活性を持っていた。よって、アルカリ化酵母は、強酸性水圏と中性水圏のいずれにも生息しており、生息環境が酸性化した際には、細胞内外を中和する生存戦略を持っている可能性が示唆された。
さらに、アルカリ化酵母T1をアルギン酸ゲルビーズ内に包括固定化した。固定化酵母をカラムに充填して、酸性水(pH4)をカラムに流入したところ、pH7以上の中和水を連続的に生産するバイオリアクターを作成することができた。本リアクターによる製造水はアンモニウムイオン濃度が高いため、リアクターの下流にゼオライト充填カラムを設置した。両カラムを通した水はpH7以上であり、アンモニウムイオン濃度が1/10以下と規制値より低くなっていた。
更に、T1細胞から破壊抽出した粗酵素をアルギン酸ゲルビーズに包括固定化して、同様のバイオリアクターを作成した。固定化酵素は菌体より高い中和活性を示した。中和酵素がゲル内に安定的に固定化されていることがわかった。
アルカリ化酵母による酸性水中和機構の解明に関する研究を行っている。
平成29年度はアルカリ化酵母が強酸性水圏に偏在するのでは無く、中性水圏でも生息しており、種多様性を持っていることがわかった。更に、両水圏では同種のアルカリ化酵母が生息していた。これらのことから、アルカリ化酵母の生息は水圏環境のpHに依存するのではなく、いずれの水圏の酵母でも潜在的にアルカリ化能を保持している酵母が生息していることがわかった。こうしたアルカリ化酵母は酸性環境下に置かれると、酸性水中和能を発揮することもわかった。
また、アルカリ化酵母をアルギン酸ゲルビーズ内に包括固定化すると、酸性水から連続的に中和水を製造できた。さらに、アルカリ化酵母を超音波破壊して得た抽出液をアルギン酸下ルビース内に固定化しても、同様に中和水を連続生産することができた。
これらの結果から、アルカリ化酵母菌体抽出液中には、酸性水を中和する酵素系が含有されている可能性が高くなった。本酵素系は特定できていないため、平成30年度に精製する予定である。
アルカリ化酵母による酸性水中和の分子機構解析研究として、以下を行う。
1.アルカリ化酵母の生息圏の解明として、塩基性水圏での生息を調査する。こうして、酸性水圏、中性水圏、塩基性水圏の全水圏でのアルカリ化酵母の生態の全容を明らかにする。
2.アルカリ化酵母による酸性水中和に及ぼす、無機酸(塩酸、硝酸、硫酸等)有機酸(酢酸、乳酸、ギ酸、プロピオン酸等)などの酸種の影響を解明する。
3.アルカリ化酵母による酸性水中和反応を触媒する酵素系と遺伝子系を解明する。 -
研究期間: 2016年04月 - 2019年03月 代表者: 岡井 公彦
若手研究(B) 研究代表者 16K18685
残留性有機汚染物質POPs(Persistent Organic Pollutants)は毒性が強く、生物蓄積性もあることから人の健康や環境に悪影響を及ぼすことが懸念されており、協調した国際的な廃絶、削減が求められている。その中で意図的に製造された有機塩素系農薬は製造・販売が禁止された後、埋設による処分が実施され、容器の腐食等による周辺地域や海への拡散が危惧されている。意図的に製造された化合物の中で2番目に埋設量の多いDDT(dichloro diphenyl trichloroethane)は分解菌の報告例はあるものの、分解経路については未知のままであり、実用レベルで利用するための酵素の改良ができない状況にある。近年、HCH分解酵素群の1つである脱塩化水素酵素LinAがDDTの分解にも応用でき、さらにPCB分解酵素群(EtbAa2-Ab2、BphB、EtbC)と組み合わせることでDDTの環を開裂できる可能性が示された。本研究ではその中でDDT分解にかかわるLinAとそれによってできるDDEに酸素を添加する酵素EtbAa2-Ab2を対象としてDDTの初期分解経路の構築を目的としている。
本年度は主にDDEに酸素を添加する酵素EtbAa2-Ab2の立体構造解析を行った。前年度に得られたEtbAa2-Ab2の結晶はin-houseのX線回折装置で9Å分解能を与えたものの、再現性が良くなかったため、蛋白質や沈殿剤濃度を検討し、結晶が得られる条件を確定した。得られた結晶は放射光施設Photon Factoryで分解能3.2Åのデータを取得した。分子置換法により、EtbAa2-Ab2の立体構造を決定した結果、非対称単位中にはAa2が3つ、Ab2が3つからなる6量体が2分子含まれていた。
A)脱塩化水素酵素LinAの基質特異性の改変
マルチプレートリーダーを用いた活性測定によるスクリーニング法を確立したが、DDTの分解活性を上昇させる改変LinAを取得するに至っていない。
B)酸素添加酵素EtbAa2-Ab2の立体構造解析
EtbAa2-Ab2の立体構造は平成29,30年度で決定する予定であったが、今年度決定することができ、当初の予定より進んでいる。
以上2点から総合的に判断した。
A)脱塩化水素酵素LinAの基質特異性の改変
引き続きDDT分解活性を上昇させる改変タンパク質を取得する。現在は平均2アミノ酸程度変異が入るようにPCRで変異導入率を調節しているが、今後は変異導入率を上げてPCRを行い、より改変されたタンパク質を取得していく。
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B)酸素添加酵素EtbAa2-Ab2の立体構造に基づく重要アミノ酸の特定
本研究計画で設定したEtbAa2-Ab2の立体構造は既に決定したので、この構造を基に反応機構を推定し、変異体解析から重要アミノ酸を特定する。 -
海洋好圧好冷菌の新奇な好圧性リパーゼとその圧力特性をもたらす構造の解析
研究期間: 2016年04月 - 2019年03月 代表者: 石田 真巳
基盤研究(C) 研究分担者 16K07870
平成29年度の主目的であるMoritella sp. F1由来Lip-IIの結晶化に必要な組換え体による高効率生産を実施した。発現ベクターをpET28aに交換した結果、大腸菌内でLip-II(80kDaバンド)の不溶性沈殿が大量に生産された。天然酵素と同じ可溶化酵素を得るため、培養温度を順に11℃まで下げてフォールディング改善を試みた。結果、15℃以下で大部分が可溶性画分に移ったが、リパーゼ活性は得られなかった。そこでMoritella marina全ゲノム配列上のリパーゼII相当遺伝子周辺を調べ、分子シャペロンpeptidyl-prolyl isomerase (PPI)遺伝子を発見した。Lip-II遺伝子と大腸菌PPI遺伝子の共発現系を15℃培養した結果、80kDaバンドと共に弱い活性が得られた。そこで活性測定時に種々2価カチオンを添加した結果、Znイオンで活性が20倍上昇した。以上で目的の高効率生産系ができた。
次の目的であるMoritella sp. F3由来リパーゼII遺伝子の一次構造解析は、F1由来Lip-II遺伝子や周辺領域を基に作成した種々プライマーでのPCR増幅は成功しなかった。そこで次世代シーケンサを用いてF3株の全ゲノム配列解析を実施した。結果、十分なcontigになるデータが得られたので、現在、目的遺伝子を探索中である。
その他、F1が生産するリパーゼが天然基質トリグリセリドも分解するかトリオレイン等の分解を中和滴定で確認し、好圧性も確認した。また、Lip-IとLip-II遺伝子がMoritella属のみならずVibrio属など他属にも広範に遺伝子対として存在することを発見した。更に、Moritella sp. F1・F3と同様の中深層由来の低温菌Vibrio sp. Pr21のPRプロテアーゼの圧力特性を調べ、これにも好圧性があることを発見した。
本研究課題の最重要目的はF1株のリパーゼII(Lip-II)の立体構造を明らかにすることである。それによって二つの大きな目標、即ち、1)好圧性をもたらす構造の特徴を解明すること、2)塩基配列上は未知遺伝子であるLip-IIとリパーゼI(Lip-I)が新種のリパーゼであることを明らかにすること、を目指す。
平成29年度は、この立体構造解析に必須の高効率発現を達成することができたので非常に大きく前進した。また、目的1)を達成するために、F1由来の好圧性Lip-IIとF3由来の非好圧性Lip-IIのアミノ酸配列の違いを比較する必要がある。F3由来Lip-IIのアミノ酸配列を解明するために、F3株ゲノムの全塩基配列を次世代シーケンサで分析した。これはF3由来Lip-IIのアミノ酸配列解明に向けて大きく前進したことを意味している。
これらの大きな進歩に加えて、平成29年度の新知見として、F1株の酵素に天然基質トリグリセリドの分解活性があったことは、酵素的にはこれらの酵素がリパーゼと呼べる分子であることを示している。また、Lip-I・Lip-II遺伝子対が予想以上に広範な微生物に分布していたことは、一次構造上は未知遺伝子だがこれらの酵素が広範な微生物にとって重要な機能を有する可能性を示している。そして、F1株・F3株と同様な中深層域のVibrio sp. Pr21由来PRプロテアーゼも好圧性を有していたことは、F1株・F3株の特徴的な好圧性は中深層に生息する微生物の特徴の可能性がある、という解釈につながる。これらは目標1)・2)を補助する新知見である。
以上のように、平成29年度は最終目的に向けて大きく前進した。しかし、高効率発現に続く立体構造解析が現在、進行中で未だ成果が出ていないため、全体の進捗状況は(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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平成30年度は、本研究課題の主目的であるF1由来Lip-IIの立体構造解析を計画通りに進める。平成29年度にF1由来Lip-IIが高効率生産できたことを受けて、平成30年度は結晶化と結晶構造解析を実施し、立体構造を解明する。また、組換え体由来のF1-Lip-IIに天然酵素と同様の好圧性があるかも確認する。
一方、F1由来Lip-IIの対照たる非好圧性のF3由来Lip-IIの遺伝子の全塩基配列を決定する。既に全ゲノム配列解析実験を終えているので、相同性などを手掛かりにF3由来Lip-IIの塩基配列を決め、大腸菌宿主への遺伝子クローニングも行う。F1-Lip-IIとF3-Lip-IIの間で異なるアミノ酸残基を調べ、立体構造解析が進めば立体構造データを参考にして、部位指定変異法を用いて、好圧性と非好圧性に影響のあるアミノ酸部位を分析する。
F1由来Lip-Iについては、何故Lip-IとLip-IIが遺伝子対として広く分布しているのか、二種の酵素の生理機能の連携を調べる。そのために、F1-Lip-I遺伝子をクローニングして高効率生産し、F1-Lip-IとF1-Lip-IIをin vitroで混合し、各酵素単独の酵素的性質や圧力特性などが混合によって変化するか分析する。また、立体構造解析も目指す。
中深層細菌由来の好圧性PRプロテアーゼについては、海洋表層に生育するVibrio種の同種酵素(アミノ酸配列類似性の高い酵素)と圧力特性の比較を行う。表層のVibrioから非好圧性酵素が得られたら、両者を比較して好圧性に影響するアミノ酸部位を分析する。
以上の内容を総括して、中深層のMoritella sp. F1とF3由来の新奇リパーゼLip-I・Lip-IIを中心とする好圧性酵素の構造と性質の相関、および、これらリパーゼの生理的意義や水圧等の環境との関係をまとめる。