科研費(文科省・学振)獲得実績 - 柿原 泰
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放射線防護体系に関する科学史・科学論的研究から市民的観点による再構築へ
研究期間: 2021年04月 - 2025年03月 代表者: 柿原 泰
基盤研究(B) 研究代表者 23K20442
本研究は、放射線影響をめぐる科学的な調査研究をもとにした放射線防護の体系(その理論、基本原則の考え方、諸概念等)がいかに形成されたのか、そして実際に社会的な場面で放射線防護の実践がいかになされたのか、その実態と問題点について、科学史・科学論的研究を基に明らかにしつつ、とくにこれまでの放射線防護に欠けていると考えられる市民的観点からの再検討を加え、あるべき姿を提示すべく調査研究を進める。
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研究期間: 2016年04月 - 2020年03月 代表者: 柿原 泰
基盤研究(B) 研究代表者 16H03092
本研究は、放射線影響をめぐる科学的な調査研究について、その形成と展開を歴史的に解明するとともに、それらが国際機関等の場でどのように評価され防護基準の策定にいかされたのかの経緯を解明することを目的とし、歴史と現状の両面から、科学史を軸に据えつつ学際的に研究を進めている。
2年目である本年度は、計画していた通り、共同研究者のこれまでの研究および進行中の最新の研究状況についての紹介・議論を目的とする全体研究会を12月と3月との2回、実施することができた。その他に、6月の日本科学史学会第64回年会に際しては、同会場にて地元市民に公開の「現代科学技術の脅威 原発の核による放射能惨害に抗して」と題する集会を企画・開催した。10月の日本公衆衛生学会第76回総会では、シンポジウム「疫学研究の意義とその活用を検討する――放射線に関連した労働者の健康を守るために」の企画立案に協力し、参加した。11月の科学技術社会論学会第16回年次研究大会では、オーガナイズド・セッション「公害・被曝被害放置をもたらす<科学>――STSアクチュアリティ再構築にむけて(その1)」および「公害・被曝問題解決の条件――STSアクチュアリティ再構築にむけて(その2)」を開催した。
また、研究成果のうち、日本科学史学会『科学史研究』誌で小特集「原発事故後の放射線健康影響問題――チェルノブイリと福島」(編集担当:柿原泰)、『生物学史研究』誌で小特集「長澤克治著『小児科医ドクター・ストウ伝』をめぐって」(編集担当:中尾麻伊香)を取りまとめて、刊行することができた。
当初の計画通り、本研究課題の研究班による全体研究会を2度開催できたこと、その他にも複数の学会でシンポジウムやセッションを企画・開催することができたこと、学会誌等において研究成果を論文として刊行できたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後も年1~2回の全体研究会や学会等でのシンポジウムを企画・開催し、研究の進展・深化を図っていく。また、国際的な研究集会も企画する。 -
公害・環境問題の諸相における疫学のあり方に関する科学史・科学社会学的研究
研究期間: 2016年04月 - 2019年03月 代表者: 篠田 真理子
挑戦的萌芽研究 研究分担者 16K12801
1)疫学史に関する国内外の文献調査と検討を行い、海外における公衆衛生史についても文献調査により検討した。疫学が裁判や一般的な認識においてどのように受容され、実効的な役割を果たしていったかという過程について、科学史及び科学社会学的に検討した。
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2)これまでの調査研究の中間的なまとめとして、科学技術社会論学会第16回年次研究大会でグループセッションを行い、「劇症型・典型例・急性症状以外の症状をどう捉えるのか」と「福島県「県民健康調査」の開始時における疫学の位置づけをめぐって」と題して発表を行った。
また、論文として「劇症型・典型例以外の被害を公害被害者に包含するための枠組み:疫学史の観点からの試論」「ABCCと原子爆弾影響研究所」「原発事故後の放射線健康影響問題――チェルノブイリと福島:序論」を発表し、公害と放射能の分野で、それぞれ、社会的な疫学の理解や位置づけについての枠組みについて考察を行った。
これらの論文や研究発表で明らかにしたことは以下のとおり、研究動向の把握と、本研究課題の位置づけや枠組みについてである。公害や環境問題においては、原因と結果、加害と被害をめぐって科学的論争論争や係争が起こることが多い。科学がそれらに対して果たしている/果たすべき役割を考察し、どのようにして科学的な究明が遅れたり歪められたりしていくのか、あるいは悪影響が軽視されたり、無視されたりしてしまう事例を疫学の観点から研究した。公害・環境問題における科学史・科学社会学的な先行研究は多いが、特に疫学に焦点を絞った考察はいまだ十分ではなく、今後研究していく必要があることを示した。
文献調査は順調に進展している。
インタビュー調査は、対象者との日程調整がうまくいかなかったため、やや遅れている。
しかし、文献調査に基づき中間まとめとして論文執筆や学会発表を行い、研究自体は先に進めることができた。
1)引き続き文献調査を行う。篠田は公害・環境問題における疫学文献を、柿原は放射能に関する疫学文献を調査検討するが、今後は前年度に引き続き海外論文や文献について収集、検討を行い国内外における疫学研究史の比較を行う予定である。
2)引き続き公害や放射能汚染に関する研究機関を調査し、資料の所在を確認するとともに内容の検討を行う。
3)インタビュー調査を進める。対象者との調整については、学会等の機会を積極的に利用する。
4)国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)をふくめ、各学術団体・機関についての資料調査を進める。