科研費(文科省・学振)獲得実績 - 高橋 肇
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変性リゾチームによるウイルスおよび細菌を標的としたマルチターゲット不活化剤の開発
研究期間: 2025年04月 - 2028年03月 代表者: 高橋 肇
基盤研究(B) 研究代表者 25K00739
これまでの研究において、加熱変性した卵白由来のリゾチームはノロウイルスやA型肝炎ウイルスに対すし不活化効果を有することが明らかとなっている。リゾチームは本来グラム陽性の細菌に作用する溶菌酵素であるが、変性させると構造が変化し、溶菌酵素の活性ではないウイルス不活化能を持つと考えられているが全容の解明には至っていない。
本研究では、加熱変性リゾチームのウイルス不活化メカニズムを明らかにし、その活性ドメインの決定を試みるとともに、不活化効果を有する活性ドメインを遺伝子組み換えにより大量に生成可能な方法を確立し、また、細菌への活性も持つマルチターゲット不活化剤として使用可能な製剤の確立を目指す。 -
研究期間: 2019年04月 - 2022年03月 代表者: 小関 正道
基盤研究(C) 研究分担者 19K02361
水道水は浄水場で浄水されてから各家庭に給水されている。浄水される前の原水は、地域により硬度や硝酸態窒素濃度が高く、それを浄水場で化学処理により低減化をするため、高額な費用が投入されている。または望ましいレベルまで低減化されない水が水道水として給水されている。そこで我々は藻類の生物作用によりこれらの濃度を低コストで低減化させ、安全でおいしい飲料水を作る浄水法の開発を検討することを目的に本研究を行う。原理は藻類が光合成すると水中の二酸化炭素を吸収し、その結果カルシウム分が析出し除去できることと、生育のために硝酸態窒素を吸収し水中の濃度を低減させることができることにある。
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加熱変性リゾチームを用いた水系感染症ウイルスの新規不活化法の開発
研究期間: 2017年04月 - 2020年03月 代表者: 高橋 肇
基盤研究(B) 研究代表者 17H03872
水系感染症ウイルスは、飲料水などや水産物を介して下痢や腹痛といった感染症を引き起こすウイルスであり、ノロウイルスや肝炎ウイルス、ロタウイルスなど複数のウイルスが知られている。なかでも、ノロウイルスは、非細菌性急性胃腸炎の原因としてはトップクラスの病原体であり、環境耐性が高くさまざまな環境において長期にわたり生残するため、確実にノロウイルスを死滅させることができる不活化剤が求められている。
これまでの研究において、加熱変性したリゾチームに抗ノロウイルス効果があることを発見した。リゾチームは細菌の細胞壁に作用する溶菌酵素であるが、加熱変性することによりペプタイドとして作用することが可能になり、抗菌ペプチドの働きを持つようになると推測されている。我々はこのペプチドとして働くリゾチームの性質に着目し、リゾチームの加熱条件とノロウイルスに対する不活化効果の関係について解析を行ってきた。
本年度においては、加熱変性リゾチームの抗ウイルススペクトルを明らかとすることを目的とし、ヒトノロウイルスへの効果、A型肝炎ウイルスへの効果を確認し、後者については、食品中における効果の実証試験を行った。
ヒトノロウイルスを用いた実験では、検査センター等よりノロウイルス患者便を入手し、加熱変性リゾチームの処理前後におけるウイルス数をリアルタイムPCRにより測定することで効果の検証を行った。また、A型肝炎ウイルスを用いた実験では、ウイルスと加熱変性リゾチームの直接曝露による不活化効果の検証と合わせて、ベリー類に付着させたA型肝炎ウイルスの不活化効果も確認した。その結果、加熱変性リゾチームは、ヒトノロウイルスの複数の遺伝型、および検証した3株のA型肝炎ウイルスを不活化することが可能であり、A型肝炎ウイルスに関しては、食品中でも不活化が可能であることが明らかとなった。
初年度においては、加熱変性リゾチームの抗ウイルス効果のスペクトルの確認を実施する計画であったが、食品での検証を前倒しで行うことにより、その応用性について早い段階で効果を示すことができたため。
現段階において、加熱変性リゾチームのウイルス不活化作用の原理は判然としない。これを明らかとするため、次年度以降においては、VLPと呼ばれる疑似ウイルス粒子を作成し、加熱変性リゾチームに暴露、両者の結合を解析することでその作用機構を明らかとする予定である。
現在、ノロウイルスについては、キャプシドプロテインをバキュロウイルスを用いて人工的に発現させることで、中身のない疑似ウイルス粒子(VLP)を作成する技術が確立されている。この粒子の示す抗原性は本物のノロウイルスと変わらないため、これを用いて加熱変性リゾチームとウイルスがどのように引き合い、結合し、結果的に不活化していくのか推察できるような知見を重点的に収集することとする。また、その作用部位についても断片化したペプチドを合成するなどし、解析を進める予定である。