科研費(文科省・学振)獲得実績 - 萩原 知明
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不凍タンパク質の氷結晶再結晶化抑制挙動の体系的把握による凍結食品の高品質化
研究期間: 2023年04月 - 2026年03月 代表者: 萩原知明
基盤研究(C) 研究代表者 23K02007
不凍タンパク質(AFP)は氷結晶表面に特異的に結合して、凍結食品の品質劣化の原因となる氷結晶の再結晶化を強く抑制する。本研究は現実の食品に近いモデル食品を用いて、AFP添加による再結晶化抑制効果の定量的評価およびその体系的把握を行い、AFP使用の最適条件の解明を試みるものである。本研究の成果は、画期的な省エネの食品凍結保存技術の実現とその効率的な利用に貢献する。また、医学・生体材料の凍結保存への応用・発展および省エネな凍結保存技術が実現することによる地球温暖化防止への貢献も期待できる。
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不凍タンパク質の食品への添加効果の定量的評価による凍結食品の高品質化
研究期間: 2020年04月 - 2023年03月 代表者: 萩原 知明
基盤研究(C) 研究代表者 20K02321
不凍タンパク質(AFP)は氷結晶表面に特異的に結合して、凍結食品の品質劣化の原因となる氷結晶の再結晶化を強く抑制する。AFPを食品に添加することで、長期間にわたって品質保持が可能な食品凍結保存技術の実現が望まれている。本研究はモデル食品を用いて、AFP添加による再結晶化抑制効果を定量的に評価し、AFP使用の最適条件の解明を試みる。本研究の成果は、省エネの食品凍結保存技術の実現に貢献する。また、医学・生体材料の凍結保存への応用および省エネな凍結保存技術が実現することによる地球温暖化防止への貢献も期待できる。
本研究は、不凍タンパク質の食品への添加効果を定量的評価することで、不凍タンパク質の最適な使用条件を確立して、不凍タンパク質を利用した凍結食品の高品質化を目指すことを目的としている。食品もしくは食品に近い試料中を用いて、不凍タンパク質の添加効果を確認するため、2020年度は、野菜・果物の植物系食品のモデルとして、タマネギの薄皮組織を、小麦ドウ製品のモデルとして、小麦粉を含んだスクロース溶液を用いた検討を行った。
タマネギ薄皮組織では、Ⅲ型不凍タンパク質を含むリン酸溶液に浸漬することで、細胞内に生じた氷結晶の再結晶化が抑制されていると思われる様子を観察することができた。小麦粉を含んだスクロース溶液では、小麦ドウを添加すると、氷結晶の再結晶化が有意に抑制され、ここにさらにⅢ型不凍タンパク質を添加することで、-10℃での氷結晶の再結晶化抑制効果が有意に増強された。デンプンそのものはむしろ氷結晶の再結晶化を促進するという既往の結果より、小麦ドウに含まれるタンパク質には再結晶化を抑制する効果があること、そして、これらのタンパク質とⅢ型タンパク質が相乗効果により氷結晶の再結晶化を効果的に抑制していることが示唆された。
これまで、不凍タンパク質の再結晶化抑制能に関する多くの研究は、食品とは大きくかけ離れた緩衝液やスクロース溶液で行われていた。前述したように、今年度の結果より、植物系食品ならびに小麦ドウ製品中での氷結晶の再結晶化が不凍タンパク質添加により、有意に抑制されることが示唆された。
当初ターゲットとしていた食品(植物系食品ならびに小麦ドウ製品)での不凍タンパク質添加効果を確認できた。
植物系食品に対しては、不凍タンパク質の添加効果を定量的に評価する手法を開発する。小麦ドウ製品については、不凍タンパク質の効率的な使用方法の確立のため、濃度条件、不凍タンパク質の種類、共存物質といった諸条件の影響の確認とその絵カニズムの解明を進める。