科研費(文科省・学振)獲得実績 - 濱崎 活幸
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温暖化が南方系有毒カニ類とイモガイ類の分布北上に及ぼす影響評価
研究期間: 2021年04月 - 2025年03月 代表者: 濱崎活幸
基盤研究(C) 研究代表者 21K12266
毒を保有するカニ類やイモガイ類は、主に南西諸島以南の熱帯・亜熱帯海域に分布するが、地球温暖化の進行に伴い日本本土沿岸に分布を拡大する可能性がある。本研究では、人に危険な南方系の有毒カニ類とイモガイ類は、どのような環境(水温)条件で北方へ分布を拡大し、定着できるかを明らかにする基礎として、幼生や成体の温度耐性を明らかにし、海洋における幼生の分散実態を遺伝的集団構造解析で推察する。
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研究期間: 2017年04月 - 2021年03月 代表者: 團 重樹
基盤研究(C) 研究分担者 17K07928
水流の向きと強さがマダコ幼生の遊泳行動と摂餌に及ぼす影響を解明することを目的に、水流の向きと強さを調節可能である上下にバルブを取り付けて水中ポンプと連結した300mL容の円柱型水流発生装置を8基作成した。4/19~5/19の間に瀬戸内海中央部においてタコツボ漁で漁獲された成熟した雌ダコ13個体を瀬戸内海区水産研究所百島庁舎に搬入し、3kLFRP水槽2面を用いてイシガニおよびマガキを給餌して養成した。雌ダコは5/4~5/23にかけて水槽内に設置したタコツボ内に順次産卵を開始した。産卵を開始した雌ダコは500L水槽に移して個別に流水環境で飼育した。6/24、6/26、および7/2に異なる3個体の雌ダコからふ化したマダコ幼生を3つの500L水槽に約1,200個体ずつ収容して飼育を開始した。マダコ幼生の餌として、ガザミのゾエア幼生を与えた。これらの飼育水槽から0、5、10、および15日齢に達したマダコ幼生をサンプリングし、各水流発生装置の中に1個体ずつガザミゾエア幼生50尾とともに入れ、装置内におけるマダコ幼生の行動を20分間ビデオ撮影した。異なる水流の向き(水流なし、上昇流、下降流)と強さ(上昇流:弱、中、強、下降流:弱、強)を装置内に発生させ、それぞれの条件下で日中に5回と夜間に3回ずつ撮影を行った。撮影後、使用したマダコ幼生の乾燥重量を測定した。現在は撮影データについて装置内のマダコ幼生の12秒ごとの垂直位置を記録するとともに、摂餌回数の観察を実施中であり、記録結果を解析することで水流がマダコ幼生の行動に及ぼす影響を定量化する予定である。
研究開始当初の計画では、本年度は異なる水流環境がマダコ幼生の摂餌行動に及ぼす影響について検討する予定であったが、ビデオ撮影装置を用いることにより、遊泳行動についても同時に検討可能とした。遊泳行動は、容器内におけるマダコ幼生の位置データを時系列に沿って記録することにより定量化する予定であるため、記録映像の観察・解析に時間を要するものの、次年度の計画(水流が遊泳に及ぼす影響の解明)を先取りしたものであり順調に進捗している。
次年度以降は、引き続き記録映像の解析を進めるとともに、マダコ幼生の浮遊・遊泳に適した水流を発生させる飼育装置の開発を実施する。水流飼育装置については、先行開発した試作装置を用いたマダコ幼生飼育実験において、すでに良好な飼育成績が得られつつあり、マダコ養殖の実現に資する成果が得られる見込みは高い。 -
温暖化が変温動物の生活史に及ぼす影響評価:両側回遊型淡水産コエビ類をモデルとして
研究期間: 2017年04月 - 2021年03月 代表者: 濱崎 活幸
基盤研究(C) 研究代表者 17K00578
地球温暖化が変温動物個体群の存続に及ぼす影響について、両側回遊型の淡水コエビ類をモデル生物として以下の4つの課題に取り組んだ。
1.房総半島のモデル河川における個体群動態:坂田川の下流、中流、上流各2定点を設け、タモ網による採集調査を毎月実施した結果、出現種、成長、繁殖期の概要が明らかとなった。
2.幼生の生存と発育に及ぼす水温と塩分の複合影響に関する実験的検討:本課題を実施する基礎として、両側回遊種であるミゾレヌマエビ、ヒメヌマエビ、トゲナシヌマエビ、ヤマトヌマエビ、ヌマエビに加え、大卵少産タイプである陸封種のヌカエビを対象として、幼生飼育における適正餌料(冷蔵テトラセルミス、培養テトラセルミス、ワムシ)を把握するために、6穴プレートで個別飼育実験を行った。その結果、両側回遊種は培養テトラセルミスとワムシを組み合わせた餌料系列で稚エビまで高い生存率で飼育可能なこと、陸封種ではいずれの餌でも稚エビまで飼育可能なことが判明した。ただし、ミゾレヌマエビとヒメヌマエビでは飼育容器内の水面にトラップされて死亡し、稚エビまで飼育できなかった。さらに、水温(20、24、28、32℃)と塩分(0、8.5、17、25.5、34)を組み合わせた条件下で、各種幼生を無給餌で飼育し、飢餓耐性を比較した。その結果、各種で適正塩分と温度上昇に対する応答が異なることが示唆された。
3.親エビの繁殖に及ぼす水温の影響に関する実験的検討:ヤマトヌマエビの親エビを20、23、26℃に設定した水槽で半年間飼育し、生存、抱卵及び幼生のふ化を調べた。その結果、26℃では死亡率が高く、抱卵するものの、ふ化率は低かった。
4.比較系統地理学的手法と飼育実験による幼生の分散能力の評価:ヒメヌマエビを対象に、沖縄県石垣島、和歌山県、千葉県の河川で標本を採集し、ミトコンドリアのCOI領域を増幅可能なことが分かった。
課題1の野外調査では、現段階で周年にわたる調査を実施でき、モデル小河川での個体群・群集生態学的知見の集積が可能であることが分かった。課題2では、各種幼生の無給餌条件下での塩分と温度適応に関する知見が得られ、今後実施する給餌条件下での実験と合わせて評価することが可能となった。課題3では、ヤマトヌマエビの繁殖に及ぼす温度の影響評価が可能であったものの、雌雄を正確に判別することが困難であった。課題4では、サンプル収集が順調に進んでいる。
課題1については、タモ網のメッシュサイズを5mmから2mmに下げ、稚エビの採集効率を上げて、各種の加入時期を特定する。課題2については、ミゾレヌマエビとヒメヌマエビ幼生の飼育容器を検討するとともに、給餌条件下での幼生飼育を行う。課題3については、ヤマトヌマエビの雌雄判別を確実に行う手法を確立する。課題4については、東海地方からのサンプルを入手するとともに、COIの塩基配列を決定していく。